足つぼの施術。ガラス張りの馴染みのお店。寄っかかると背もたれが程よく倒れる合皮の椅子。いつも痛いのは親指のてっぺん。こちらがしかめ顔をしてるのに表情を少し緩めて微笑んでいる日に焼けた先生の顔。
店先は居間であり客間。目の前に大通りを避けたバイクの往来。そこで遊んでいる学校へ上がる前の先生の子ども。じっとしていないその子を叱る母親の声。そこへ道を挟んだ向かいの宿から気のよさそうなお兄さんが現れしばらく子供の面倒をみる。半軒ほどの大きさの事務所の前で主を探している薄着の西洋人たち。そこにあわてて戻るお兄さん。
お昼時には車座になってごはんを食べている家族。輪に入ってと誘ってくれる手招き。
確かにあった風景、音、におい、が昨日のことのように蘇り、看板をおろし完全に閉まっている店舗跡と、宿の跡形もなくなってしまった更地を見ながらしばらくそこにいた。