こないださクラブで外国人が声かけてきたの
うん
背が高くてまあまあだったよ
同じ名前だったような
何度名前を聞いても聞き取れなくて
まあいいんだけど
でさあたしが
ちょっと英語が話せるってわかると
興奮して一方的にまくしたててきて うん
あぁ、ないなあって思ったけど
あ、これラジオで話せるかもと そうそう
まず軽く説教、そういつものやつ
ここはあなたの国じゃないですよ〜
人に声をかけるときはね…
え?
うん
勿論一杯おごってくれたよ そりゃそうでしょ
同じものを頼んだの
何度名前を聞いても聞き取れなくて
まあいいんだけど
でさあたしが
乗り気じゃないの流石に察したみたいで
目の前の子たちをきょろきょろ うん
あぁ、別の子探し始めてるなって思ったけど
あ、あたしも友だち待ってたし そうそう
さてどうやって煙に巻くかなって
ここはトイレに行きたいだよねやっぱ
人並んでたけど…
え?
うん そしたらさ 急にね あの子に声かけたい 何て言ったらいいのかって聞いてきやがったの
勿論 はあ?って言ってやったよ そりゃそうでしょ
同じことあったね
何度かあったよね
まあいいんだけど
でさあたしが
ちょっと怒ってるのわかると
典型的な作り笑顔向けてきてさ
あぁ、あつかましいって思ったけど
あ、いいこと思いついたって そう例のあれ!
まず軽く声かけて
ここは一言こう言えばって
アナタ スキ ○○○○…
え?
うん それで別れたんだけど
少し経ってドリンク取りにカウンター そう!
奴がいて!
急いで逃げようとしたんだけど
人の波をかきわけてあたしの方に近づいてきたの
あぁ、やばい殴られるかもって思ったけど
あ?なんか笑ってるなと そうそうそう
え?
うん
結論うまくいったんだって
やっぱクラブだからね 来てる子もさ、ほら、ね
でさ奴が もう一杯おごりたいって言うから
同じものを頼んだの
名前は聞き取れなかった…
(二〇二五年 七月 ラジオドラマ M酒場のカウンターにて)