山に人間を沢山集めて
音楽の祭りをやれ。
そのために
仲間とまず、音の道具を用意しろ。
それから、その道具を使って独自の音楽を作るんだ。

今聞ける音楽は全部人工知能が作ったやつで、自分は充分満足してるし、音楽配信が発達してるおかげでどこでも気軽に聞けて便利だと云ったら、じいさんは軽く笑って、音楽がもともとどうやって作られてたかを細かく教えてくれた。音楽を作るのに色んな音を出す道具が必要なんだと。
張り詰めた紐のようなものを弾いたり、大小複数並んでいるものを棒で叩いたりして生まれる音をひとつにまとめて音の集合を作る。これが音楽の基礎で、さらに人の声を重ねたのが唄になって…。
驚いたのはそれを聞くためにものすごい数の人間が現実の同じ場所に集まる何とかってのが、夏になると色んな所で行われてたってことだ。生で鳴らした音楽を他人と一緒に聞く?
しかも出所したら自分にそれをやってみろという。「いいえ」酒場へ行けば、道具は全て揃っているし、それを使える奴らもいて、既に自分を待ってると。
どこまで手はずが整ってるんだ。どうやってこの話を終わらせたらいいんだ。
あぁ、多分、今回の罪の刑罰によって警察の連中に何かを断る記憶を消されたか、どうやって逃げていいのかわからなくなってしまったんだな。そう思ったら、なんか少し笑えた。
人生で初めて現実で人と関わるのか。それだけで充分大きい挑戦で、さらに音楽を作って祭りをやるなんて想像を越える役目ではあるが、やっぱり「いいえ」酒場には行ってみたいから、生返事をしておいた。

はっっくしょん!
保菌者にしかできない仕事だからな。