海までは歩いて数十歩。寝室からの景色が気に入って、ここに小屋を借りた。五年ぶりの浜辺。やわらかい砂の上を歩いているだけなのに、幸せがゆっくりと心の中に広がる。一日の中で太陽が一番活動的な時間を避けて、少しだけ泳いでみた。実際は遠浅の海をある程度の深さまで歩いて、泳ぎのようなことをしながら水面に浮かんでいただけだが、体を安心して預けて、本来の場所に戻れた気がした。

太陽にたくさんあたったから、眠くなっちゃった。さっきの本の続きを読もうかな、喉乾いたな、だんだん視界が狭くなっていくな︙

「みんな集まって‼」
「温さんの番組始まったよー」
「待ってぇ〜」
「わぁ、見て!」
「温さん、今日は海にいるの?」
「すごくきれいな場所」
「地球にはまだお水がたくさんあるのね」
「あの中に入るってどんな心持ちだろ」「ちょっとこわいな」
「あれ、場面が変わったね」
「あ、何か口に運んだよ。まだあんな大きなものを食べてるの?」
「あの棒みたいなの使うの難しそう。練習しとこうかな」

足が伸ばせる長い椅子の上でうとうとしていたらしい。軽く伸びをすると、お腹の上で悠々としてた子猫が驚いたように砂浜の上へ飛び降りた。

んんん、誰か何か言った?